先日、夏休みの長男家族と一緒に福井県の常神と云う所で3日ほど過ごした。
男親の子供に対する行動を観ていると、
子供に対してもっと寛容であって欲しいと感じる。
自分の事を思い出しても、やはり同じことが云えたのだと思う。
子供に対する愛情や成長に対する期待や願い、、、、これはどの父親も変わらない。
しかし、どうしても男親は「厳しく突き放すのが教育だ」と思い込み、
自分でも気づかぬうちに寛容の気持ちを忘れてしまう。
そして、人生で二度とない「子育てと云う楽しい時間」を
失っていることすら気付かずに過ごす。
40年以上昔のことだが、自己啓発のための本を何冊か読んだ事がある。
ある時、ディールカーネギー著「人を動かす」と云う本に出会った。
今までに、膨大な数のこの手の本が出版されたが、
その時分のほとんどすべての著者が、
この本を参考にしていることに気付いた。
それはともかく、
この本のなかで紹介された一つの文章を思い出す。
少し長い文章だが、子育て中で、働き盛りの男親の方々にはぜひ読んでいただきたい。
次ページへ
父は忘れる
リヴィングストン・ラーネッド
坊や、きいておくれ。
お前は小さな手に頬をのせ、汗ばんだ額に金髪の巻き毛をくっつけて、安らかに眠っているね。
お父さんは、ひとりで、こっそりお前の部屋にやってきた。
今しがたまで、お父さんは書斎で新聞を読んでいたが、
急に、息苦しい悔恨の念にせまられた。
罪の意識にさいなまれてお前のそばへやってきたのだ。
お父さんは考えた。これまでわたしはお前にずいぶんつらく当たっていたのだ。
お前が学校へ行く支度をしている最中に、タオルで顔をちょっとなでただけだといって、叱った。
靴を磨かないからといって、叱りつけた。
また、持ち物を床の上に放り投げたといっては、どなりつけた。
今朝も食事中に小言を言った。
食物をこぼすとか、丸呑みにするとか、
テーブルに肘をつくとか、パンにバターをつけすぎるとかいって、叱りつけた。
それから、お前は遊びに出かけるし、お父さんは停車場へ行くので、一緒に家を出たが、別れるとき、おまえは振り返って手を振りながら、「お父さん、行っていらっしゃい!」といった。
すると、お父さんは、顔をしかめて、「胸を張りなさい!」といった。
同じようなことがまた夕方に繰り返された。
わたしは帰ってくると、お前は地面に膝をついて、ビー玉で遊んでいた。
長靴下は膝のところが穴だらけになっていた。
お父さんはお前を家へ追いかえし、友達の前で恥をかかせた。
「靴下は高いのだ。お前が自分で金をもうけて買うんだったら、もっと大切にするはずだ!」
-これが、お父さんの口から出た言葉だから、われながら情けない!
それから夜になってお父さんが書斎で新聞を読んでいる時、お前は、悲しげな目つきをして、おずおずと部屋に入ってきたね。
うるさそうにわたしが目をあげると、お前は、入口のところで、ためらった。
「何の用だ」とわたしがどなると、お前は何もいわずに、
さっとわたしのそばに駆け寄ってきた。
両の手をわたしの首に巻きつけて、わたしに接吻した。
お前の小さな両腕には、神さまがうえつけてくださった愛情がこもっていた。
どんなにないがしろにされても、決して枯れることのない愛情だ。
やがて、お前は、ばたばたと足音をたてて、二階の部屋へ行ってしまった。
ところが、坊や、そのすぐ後で、お父さんは突然なんともいえない不安におそわれ、
手にしていた新聞を思わず取り落としたのだ。
何という習慣に、お父さんは、取りつかれていたのだろう!
叱ってばかりいる習慣-まだほんの子供にすぎないお前に、
お父さんは何ということをしてきたのだろう!
決してお前を愛していないわけではない。
お父さんは、まだ年端もゆかないお前に、無理なことを期待しすぎていたのだ。
お前を大人と同列に考えていたのだ。
お前の中には、善良な、立派な、真実なものがいっぱいある。
お前の優しい心根は、ちょうど、山の向こうからひろがってくるあけぼのを見るようだ。
お前がこのお父さんにとびつき、お休みの接吻をした時、そのことが、お父さんにははっきり わかった。ほかのことは問題ではない。
お父さんは、お前に詫びたくて、こうしてひざまずいているのだ。
お父さんとしては、これが、せめてものつぐないだ。
昼間にこういうことを話しても、お前にはわかるまい。だが、明日からは、きっと、よいお父さんになってみせる。
お前と仲よしになって、一緒に遊んだり悲しんだりしよう。小言を言いたくなったら舌をかもう。そして、お前が子供だということを常に忘れないようにしよう。
お父さんはお前を一人前の人間とみなしていたようだ。こうして、あどけない寝顔を見ていると、やはりお前はまだ赤ちゃんだ。
昨日も、お母さんに抱っこされて、肩にもたれかかっていたではないか。
お父さんの注文が多すぎたのだ。
コメントをお書きください